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ざつと四十人近い客数であつた。その半ばあたりへ来ると、直造は一々前まで行くのを止めて、ふりかへつては「山下さん、お次へどうぞ」と云ふ風に名を呼びはじめた。だが、房一の所へはなかなか来なかつた。大部分の客が席に居並んだ頃になつて、房一は漸く自分を呼ぶ直造の稍しやがれた声を聞いた。
「それでは、又あらためて伺ひます」
「ジョン、そら!ウシ!」
「うん、寄りがあるからな、あんたはうちに帰つとんなさい」
「それあ、いかん。こんなに多くはいらんよ」
「いや、そんなこたあ、――そんなこたあしませんよ」
「ふうむ。いや、よからう」
「あら!いらつしやいませ。ようこそ。――ほんとうに、よくまあ!」
「君達は一体何者だ!」
並んで立つと、いきなり
房一の帰るのを見送つた正文は、玄関から居間へひき返しかけたが、ふと考へなほして診察所の方へ行つた。すると、そこの廻転椅子の上に、行儀わるくずり落ちさうに腰かけて、両脚を床の上に思ひきりのばした恰好の練吉が、新聞紙を両手で顔の上に持ち上げながら読んでいるのを見つけた。
「えらい評判ですなあ。けつこうですよ。ぜひ話しに来て下さい。わたしはこんなにいつもひまですからな」
これがこの小さな字である。
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