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    不幸なことに房一の予測はあたつた。いや、それ以下とも云へた。

    身体を拭きにかゝつていると、台所の土間の方で、誰か来たらしい、盛子に向つてしきりと何か云つている声が耳に入つた。それは、せきこんだ、悲しげな、訴へるやうな女の声だつた。

    半シャツの男が進み出た。

    「時に、お宅は鍵屋の分家の後ださうですな。あすこは大分前から空家になつていたと聞いていましたが」

    宿の者はこういっただけで、その以上の説明を加えなかった。伊助の報告もそれで終った。

    「おい、早く早く」

    「何かの、それは」

    かりるに当って女房が挨拶に行ったら、温泉のぬるいことを例外なく念を押して、

    「捕虜が内地へ送られるさうだよ」

    「小倉組といふと、下の工事場の方ですな」

    患者の多くは近在の農夫達であつた。それは大体に於いて、開業以前に予想していた通りだつた。鈍のろい、ゆつくりした口調で声をかけながら、彼等はおづおづと高間医院の玄関を入つて来る。彼等は医者に診てもらふためにわざわざ河原町へ出て来るのではなかつた。農具とか種物とかを買ひに出て、ついでに立寄るのであつた。それで、彼等の病気はすでに治療の時期を失しているか、でなければ手のつけられない慢性のものが多かつた。

    「はい」

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