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    右手の台所の方ではしきりと物音がしていた。道平より先に朝早くから手つだひに来ている房一の義母と、まだ結婚して間もない盛子とが土間を掃いたり戸棚を拭いたりしているのだつた。

    印袢纏の背の高い男がその時、半シャツの男に向つて目くばせをした。

    「あゝ、さうだつた。なあんだ!」

    その頃、紙衣かみこの神主達の行列は町からかなりはなれた河向ふの路をぞろぞろ歩いていた。

    「あのね、何ですよ――」

    「ふうむ。いや、よからう」

    「はン」

    云ふなり、ごろりと仰向けにひつくり返へると、新聞を持ち上げ、眼をぱちぱちさせ、やがてうとうとしはじめた。すると、面長な、普通よりもよほど大きい練吉の寝顔には、年に似合はない駄々児のやうな表情が浮んだ。

    「はあ、いや。もう手前どもは老いぼれ同然ですからな」

    「えゝ、このたびこちらへ戻りまして、仲通りに開業しました高間房一ですが、つきましては一寸御挨拶に――」

    「やあ。――こちらへ」

    「居なくたつて訴訟はいくらでもできらあね」

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