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「いや、挨拶まはりですよ。どうぞよろしく」
「ねえ、高間さん。どうもこの追鮎は背中に掛り傷があるんで元気がないですよ」
又とぎれた。
私はもともとヌル湯好きで、いつまでつかっても汗のでない程度が好きだ。
尿には蛋白質はなかつた。排便を顕微鏡でのぞいてみた。いる、いる。蛔虫に十二指腸虫の卵がうんとこさ見えた。
「いや、まあ。――後の分もありますよつて、黙つて預つといて下さい」
さう云ひながら、盛子はゆつくりと喰べていた物がまだ口の中に残つているような無邪気な顔をした。
その粗暴な外見とは反対に、徳次はさういふ血生臭ちなまぐさいことが嫌ひだつた。そして、人並外れた敏感さを示すのであつた。今もそれで、彼はいかにも心外げな様子を、その無意識な仕草の中に現していた。
と、彼女は半ば問ふやうに、まじまじと徳次の顔を眺めた。彼はいつの間にか戸口から少し家の中へ入りこんでいた。だが、その奇妙な遠慮深さのために片手で入口の柱をつかまへたまゝ、宛あたかもまだ家の中へはすつかり入り切つてはいませんや、と云つているやうな恰好をしていた。その時盛子は男が今一方の手で平つたい笊を抱へているのに気づいた。その中には笹の葉のやうなものがのせられ、下では魚の腹らしいものが光つて見えた。
「どこか悪いですかな」
房一はふりかへつた。
練吉は眠気から覚めたやうに、
ふと気づくと、玄関に人が立つていた、半シャツの男だ。瞬間、又来たな、と思つた。
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