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    と、横合から老父の道平が房一に寄り添つて来た。

    「うん、何かア」

    と、徳次は叮寧にならうとして一種奇妙な言葉づかひになりながら、

    「ズブリと相手の眼の中へさしこんでしまつたさうでね。――親方すみません、とあやまつたと云ふんだが、どうもね、――何しろ他の人の見てる前でやるんだから、たまつたもんぢやない」

    「あゝ、さうだつた。なあんだ!」

    温泉は街道から幾折れかの石段で溪ぎわまで下りて行かなければならなかった。街道もそこまでは乗合自動車がやって来た。溪もそこまでは――というとすこし比較が可笑おかしくなるが――鮎が上って来た。そしてその乗合自動車のやって来る起点は、ちょうどまたこの溪の下流のK川が半町ほどの幅になって流れているこの半島の入口の温泉地なのだった。

    「ありがたう。――あ、大きいね」

    「ほんとうに火事があつたのかい」

    「ホリョ?」

    「さあ。どうぞ、どうぞ」

    「いや、どうも」

    さう云ふと、男は入口に待つていた印袢纏の背の高い男とつれ立つて、高間医院を出て行つた。

    「御焼香を。――どうぞ、お近いところから御順に」

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