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    「もう一人後から来るかもしれませんが、そしたらよろしく頼んます」

    「さやうで御座りますか。お忙しいところを御苦労さまで」

    相手が急に三人にふえたためか、柵の中の長身な男は一層興奮した。

    「おい、やつは所長だぜ。まだ新任で、来たばかりなんだ。――行かう!」

    「大石練吉です」

    八月末の思ひがけない冷気の後で又暑さがぶり返し、それは永くつゞいて、もうがまんがならないと云ふ頃に一寸色目をつかつた風に凌しのぎ易くなつたが、それも一日か二日で又もやぶり返し、今度は前ほどではないにしても緩漫に、のろのろと、いつまでも同じやうな暑さの日がつゞいて、九月に入り、九月の半ば過ぎてもまだちつとも初秋らしい気配は見えなかつた。あの夏も頂点を過ぎたのだと思はせたやうな草木の黒つぽさも何かの間違ひ恐らく人間の希望的観測といふやつだつたのだらう、その黒い沈んだ色さへ不機嫌さうにいよいよ黒つぽく見えた。

    「あゝ、お医者?」

    「なに?競馬のこと?」

    「おや、いつのまにそこに来てなさつたかね。お茶ですか、上げますとも」

    「あら、お帰んなさい。随分早かつたのね。もう済んだんですか」

    「はあ、はあ」

    尿には蛋白質はなかつた。排便を顕微鏡でのぞいてみた。いる、いる。蛔虫に十二指腸虫の卵がうんとこさ見えた。

    「杉倉まで――」

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