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房一はきつぱり云つた。男は、これは話が判る、といふやうな顔をした。それに押つかぶせるやうに、
今日幾人かと会つて口を利いただけで、彼は自分が今はじめて河原町での医師になつているのを感じた。それはまだ形ができてはいなかつた。だが、彼の足は今河原町の土を踏み、彼等が房一を認めると否とにかゝはらず、否応なくその相手になつていなければならなかつた。この短時間のうちに得た小さな発見は、何故か房一の胸に或る落着きを与へた。
と、云つた。
徳次はきまり悪げに、しかし、又あのきよろりとした眼つきにかへりながら云つた。
「うむ」
「どういふことでせうね、まあ!」
横合から冷かすやうに口を入れたのは雑貨店の庄谷だつた。痩せた上に黒く日焼けがし、固く乾いたやうな顔には小さいが白味の多い眼がいつも人を小莫迦こばかにするやうに閃いていた。彼はさつきもその眼で入つて来たばかりの房一を見、房一が挨拶すると「あン」といふやうな声を出しただけで、すぐに話に聞き入つていたのだつた。
「私もこれで元は法律書生でしてね。司法官か弁護士試験でも受けるつもりで、神田の私立大学に通つていたもんです」
それは正文にかゝりつけの患家だつた。
「いや、それあ貰つたのが分家だから、相手はやつぱり分家の喜作さんさね」
口ごもつて、
「あ、さうだ。お茶、お茶。おい、お茶を出してくれ」
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