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と、小谷は目を丸くした。欲しさうだつた。すると、逸早く、
「さうなんですよ。まあだ帰らないの」
「やつぱり、あんただつた」
と、鬼倉は意外に思つたらしい。小首をかしげていたが、
小谷はやさしみのある顔をぽつと紅らめ、いくらか饒舌になり、それと共によけいきいきいする声で話した。
房一は満足げに、かへつて来た犬の頭をかるくたゝいた。
男は語尾に力を入れて、房一の眼の中をのぞきこんだ。
「畜生、弱い奴だ」と、根津は笑った。
「いや、これから往診に行くところだ」
「あん」
男は、びつくりしたやうに房一を見た。
もう一月あまり前から気づいていたのだが、はつきりしなかつた。云はうか云ふまいかと迷つていた。たつた今、大きな麦藁帽子の縁で半ば隠されてはいるが、むくれ上つた幅の広い肩がぴよいぴよい目の前を歩いてゆくのを見ているうち、突然云ひやうのない親しさの感覚に捕へられた。打ち明けてみたくなつた。何にも如らないで、こんなに変な風に脚を丸出しにして、私にはおかまひなしに先を歩いている!
房一は目を輝かせて云つた。
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