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「印度洋の方では、何とかいふ軍艦がたつた一隻で荒あばれまはつているんだつてね。それがちつとも捉つかまらないと云ふから面白いねえ」
「や、ありがたう」
「千光寺さんに使ひをやつたのかい。――誰もまだ行かないつて?――何あんて間抜けだのう。庄どん、お前一つ行つて来とくれ。提灯ちやうちんを忘れるなよ。もう皆さんがお集りですからお迎へに上りました、つて云ふんだよ。うん、うん、さうよ。いつしよにお伴をしておいで」
が、それは徳次であつた。
「ふむ」
と、練吉はわざとらしく顔をしかめてみせた。
「なに?」
房一は手足を洗ふと、簡単に診察着をひつかけて表へ廻つた。
「ふうん、潰れるだらうな」
「ほゝう!」
それは六月も末のかつと輝いた午ひる近い一つ時だつた。いや、正午はもう廻つているかもしれない。畑地には道路のすぐ傍にあまり大きくない柿の木がぽつんと一本だけ立つていた。その葉はまだ新芽の柔かさを保つていた。日にきらきらしている。さうやつてひとりでに自分を磨いているみたいだつた。誰も表の道路を通らなかつた。
と、彼は恐しく手まどつて答へた。
不幸なことに房一の予測はあたつた。いや、それ以下とも云へた。
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