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「ねえ。はやく」
「ほう、いつから」
それがふしぎに思はれた。
「うん、寄りがあるからな、あんたはうちに帰つとんなさい」
「どうしませう、ほんとうに!すつかり落しておしまひになつたんですのね。――どうも、さつきから様子がちがふと思つていたんですが、道理で!――さうでしたわねえ、お髯がなくなりましたわねえ」
「ぜひ、さういふことに」
今泉の読んだのは予定記事だつた。だが、早のみこみと、簡単な熱中家が造作もなくつくり上げる本当らしさ、それによつてなほ熱中するといふあの癖とによつて、彼はそれをすでにあつたことのやうに話しこんだ。若し、他にまだ話したくてたまらないことがなかつたら、この報告はもつとくはしく、もつと飛躍しただらう。
「杉倉まで――」
すると、徳次はびつくりしたやうな眼で房一を見やつた。
――「それでは、わしの方からお礼を云はなきあならんのです。どうぞ、よろしく願ひますわ」
「あなたの追鮎は元気らしいなあ」
「いや、あれは私が勝手に頼んで来てもらつたんですからな、御心配はいりませんよ」
「あゝ、よからう。大賛成ですよ」
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