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「痛むか?」
両隣りに挨拶するのも、土産ものを贈るのも、ここに長く滞在すると思えばこそで、一泊や二泊で立去ると思えば、たがいに面倒な挨拶もしないわけである。こんな挨拶や交際は、一面からいえば面倒に相違ないが、またその代りに、浴客同士のあいだに一種の親しみを生じて、風呂場で出逢っても、廊下で出逢っても、互いに打解けて挨拶をする。病人などに対しては容体をきく。要するに、一つ宿に滞在する客はみな友達であるという風で、なんとなく安らかな心持で昼夜を送ることが出来る。こうした湯治場気分は今日は求め得られない。
「便所に化物が出たそうです。」
その「含有量」といふ言葉は富田が昨日聞き覚えたばかりのものだつた。
喜作の方でも、房一の来るのを認め、
と、練吉は房一の方をふりむいた。
「ほう、この家鴨あひるの嘴みたやうな金具は、こりや何かな。ほう、こりやよく光る小刀だな。こんなに何本も何に使ふのかな」
「はい、あの、切れて居りますが」
と訊くと、遊び友達と河へ行つたといふ返事であつた。
今泉はかすかに鼻のあたりを不満げにふくらませた。
と手早く切り上げて、堂本の家を出た。
「ね、どこも悪くない。だが、その丈夫な身体の中に虫が巣をつくつとる。いゝかね、心臓病とか腎臓病とかいふやうなものではない。虫を駆除する、つまり身体から出してしまへばあんたの身体はもと通りぴんぴんして来る。悪い虫だが、とつてしまへばよいのだから、他の病気よりは性質はいゝと云ふことになる。――判つたかね」
「どうでせう。いつそあの障子も脇戸もとり払つて、曇り硝子に高間医院といふ字を抜きましてね、厚い二枚戸でも入れたら――」
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