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徳次は口のあたりをもごもごさせた。
「馬子まごにも衣裳つて云ふから――」と云つたほどである。
「よし、それでは預つとかう」
徳次はきまり悪げに、しかし、又あのきよろりとした眼つきにかへりながら云つた。
「何しに来た?」
「うむ、うむ」
房一はその「ごとき」といふ箇所にわざと力を入れながら、つゞいて、今夜の席に招かれたことを謝し、甚だ不本意ではあるが止むを得ぬ所用があるので途中から退席させてもらひたい、と述べた。
「ね、どこも悪くない。だが、その丈夫な身体の中に虫が巣をつくつとる。いゝかね、心臓病とか腎臓病とかいふやうなものではない。虫を駆除する、つまり身体から出してしまへばあんたの身体はもと通りぴんぴんして来る。悪い虫だが、とつてしまへばよいのだから、他の病気よりは性質はいゝと云ふことになる。――判つたかね」
「何にしても、えらいこつてしたなあ」
「さうです」
声をひそめて、富田が訊いた。
それは、やつぱり何となく「役所」臭かつた。
そして、徹夜の仕事を連続していると、視神経の疲れが何よりの悪刺戟になることがのみこめてくる。もっとも、私は強度の近視のところへ、遠視が加わったから、メガネをかけても外してもグアイが悪いのである。それがメガネのツルを支えている鼻梁の疲れを代表者として頭の廻転に鈍痛を加えてくるのである。
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