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練吉と房一は、川沿ひの路を、肩を並べて自転車を走らせていた。
房一は白シャツを着た小柄な大工と並んで立ちながら、玄関を眺めて云つた。
と、一向にそんなことを知らない房一が云つた。
徳次は身体中からこみ上げて来る悦よろこばしさのためにさうなつたかの如く、思ひ切り伸び上るやうにして答へた。だが、それも向ふにはよく聞きとれなかつたらしい。房一は川向ふで手をふつた。下手の方を指さした。徳次には判らなかつた。房一は又自転車にのつた。
「どうも、済んまへんでした」
と、彼は恐しく手まどつて答へた。
「もうそんなにおよろしいんですの?すつかり御無沙汰していました。ほんとうに!よくおいでになれましたわねえ」
小谷は仰山ぎやうさんな表情になつた。
感心したやうに呟くと、房一はくるりと向ふむきになつて歩き出した。
「それで、何かね。ドイツ兵は徒歩てくで通るんかね」
「それあ、いかん。こんなに多くはいらんよ」
だが、変化は盛子にだけあるのではなかつた。房一も、捉みどころのないやうに思はれる一年あまりにもかゝはらず、あの計画だの野心だの猪突ちよとつだのいふものの他に、何か一つの自然さが、生活のつくり上げる自然な段取りといふやうなものがいつの間にか身体にくつついて来たやうであつた。
それが堂本だつた。
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